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医療情報

日本旅行医学会の記事より転載

秋からの食中毒

 秋から翌年の春にかけ、ノロウィルス感染症が時々流行します。インフルエンザの流行する時期と同じく冬場(11月〜3月)に流行する“お腹のカゼ”として知られている経口感染症です。
 2007年秋に、4泊5日の中国(北京)への修学旅行に参加した群馬県立A高校の生徒184名と職員11名のうち、生徒8名が3日目に嘔吐や下痢などを 訴え、帰国してさらに10名が同様の症状を訴え、3名が入院しました。うち、7名からノロウィルスが検出され、帰国して次の日をピークになんと、計91名 が発病しました。

ノロウィルスとは?

 ノロウィルスとは、1968年にアメリカ・オハイオ州の小学校で集団感染した食中毒で発見された小型のRNAウィルスです。
 わずか10個のウィルスでもヒトを発病させ、60℃の熱や水の消毒用塩素に対しても抵抗力のある小型ウィルスです。感染すると突発性の激しい嘔吐と下痢、そして腹痛が起こりますが、健康な若者は1〜2日で回復し、死亡するケースはありません。

どう診断する?

 冬場(11月〜4月)、食事をして平均24〜48時間で症状が出て、平均12〜60時間症状が持続するケースは、ノロウィルス感染症を想定して対応すべきです。
 国内の病院では、20分ほどで判定出来るクイック診断キットが使われており、その場で診断が下されます。

どう治療する?

 ノロウィルス感染症には特効薬がありません。水やお茶、あるいはジュースやスープをこまめにとって脱水を予防し、整腸剤を服用するしかありません。症状がひどい場合は、入院して点滴で水分と電解質(血中の塩分)の補充をします。

どう防ぐ?

@〈食物や水→ヒト〉

 食品中に含まれる細菌より小さいウィルスを見分けることは不可能です。ですからA高校で発症した1次感染は防ぎようがありません。ほとんどのケー スでは、流通経路の途中で、運悪くノロウィルスが食材に少量紛れ込んでいたというのが実態です。ですから、感染症の発生したホテルやレストランを避けるこ とでは、全く予防策にはなりません。

A〈ヒト→ヒト〉の感染は防ぐことができる!

 A高校の83名の2次感染は、ヒトからヒトへの感染です。現場の生徒や先生に2次感染予防の正しい知識があれば、ほぼ防げたはずです。

● 石鹸を使い、流れる水道水で手洗いを

 ノロウィルスは、感染したヒトの吐物や便の中に多量に含まれています。しかし、感染したヒトの排便後の手洗いが不十分で、間接的に他の人の手指に付着し、その手でお菓子をつまんだりして口の中に入ることがほとんどの〈ヒト→ヒト〉の2次感染パターンです。
 ですから、感染した人も未感染の人も、トイレの後、食事や調理の前に、石鹸を使い十分な量の水道水で手指を洗うことが最大の予防法です。

● 発病したヒトの介抱や吐物の処理では、必ずマスクを使用すること

 ほんの10個でも口の中に入ると発症するノロウィルスは、結核や麻疹(はしか)同様に空気感染に近い飛沫感染をすることがあります。特に、飛行機などでの嘔吐現場では、十分注意が必要です。
 できれば、使い捨てのプラスチック手袋を使用してください。プラスチック手袋がなく、吐物などを手で触った場合は、石鹸を使い十分な量の水道水で手を洗えば大丈夫です。

乳酸菌系整腸剤での胃腸炎予防を!

 ヒトの腸内には、多数の善玉菌がいて、消化吸収の手助けをしています。それらの善玉菌を積極的に増やすことで、下痢や嘔吐を起こす細菌やウィルス の侵入に対して抵抗力が付くことが医学的に実証されています。善玉菌を多く含むヨーグルトを毎日食べれば、下痢や胃腸炎を防ぐことができます。
 海外修学旅行時などは錠剤であるパンラクミン(第一三共ヘルスケア)を朝と夕に4〜6錠ずつ服用すれば、ヨーグルトを毎日食べたのと同じ量の善玉菌を摂取したことになり、下痢や胃腸炎を防ぐことができます。医師の診察を受けなくても薬局で購入が可能です。

粉末のスポーツドリンク剤で嘔吐や下痢の初期対応

 スポーツドリンクには、水と電解質(血中の塩分)がバランスよく入っており、病院での点滴と同様の効果があります。ですからノロウィルスや他の胃腸炎の初期対応に使えます。海外での備えには、粉末製品を持参しましょう。
 日本旅行医学会(www.jstm.gr.jp)では、このパンラクミンなどの整腸剤1週間分に加えて@使い慣れた痛み止め(痛み止めは解熱剤にもなります)、A使い慣れた風邪薬を2、3日分持参することを積極的に勧めています。


熱中症に注意!

熱中症とは高温の環境下で体内に熱がこもって起きる熱障害のことで、重症度別に以下の3つに分類されています。

分類 症状 対処法
I度(軽症) めまい、立ちくらみ
筋肉の痙攣、こむら返りなど
日陰で休む
水分補給
II度(中等症) 吐き気、めまい、寒気
強い疲労感など
病院での輸液
III度(重症) 意識障害、高熱
肝・腎機能障害など
専門施設での入院治療

予防するには

 帽子や日傘などで直射日光を避け、薄手の長袖、長ズボンを着用してください。街中でも照り返しなどによって天気予報の最高気温を大きく上回る所が たくさんあります。汗とともに塩分も失われるため、水分だけでなく、スポーツドリンクや塩味のクラッカーなどで塩分も補給することが大切です。
 屋内でも注意が必要です。人は汗をかいて体温調整をしますが、日本での死亡例の多くが室内で起きていることからもわかるとおり、エアコンや扇風機の無い 高温多湿、無風状態の室内に長くいると、発汗機能の異状から体温調節が出来なくなり、熱中症を発症します。風通しを良くしたり、扇風機やエアコンを効果的 に利用して下さい。

かかりやすい人

 子どもと高齢者は体内にある水分の予備量が少なく、熱中症にかかりやすいので特に注意が必要です。特に子どもは自分から症状を訴えることが少ないので、保護者が十分に注意する必要があります。
 暑さに慣れていない人も熱中症にかかりやすく、暑さに対する体の適応は、温度の変化よりも遅れるため、暑くなりはじめの時期に熱中症の発生が多くなります。

かかってしまったら

 屋内外問わず、熱中症の症状が見られたら、風通しの良い涼しい場所に運び、衣類をゆるめて楽な姿勢で寝かせ、濡れタオルを額や首筋に当てる、あお いで風を送るなどしてください。皮膚が冷たい、震えがあるといった場合は乾いたタオルで皮膚マッサージを。顔面蒼白で脈が弱ければ、足を高くしましょう。 意識があり、吐き気が無ければスポーツドリンクや薄い食塩水などを飲ませます。それでも症状が治らなければできるだけ早く病院に搬送して下さい。また、応 答が鈍い、言動がおかしいなど少しでも意識障害がある場合には重症を疑い、すぐに病院へ搬送してください。

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